マスク不足を受けて、
厚生労働省より、
医療現場におけるマスクの再利用(つまり消毒して使う)を許す事務連絡を出しました
(事務連絡4月10日「N95マスクの例外的取り扱いについて」)。
そこには
❶、過酸化水素水プラズマ滅菌器による滅菌、
❷、過酸化水素水滅菌器による滅菌、
❸、5枚のN95マスクを毎日取り換える
──の3つの方法が示されています。
❶❷は、米国でメーカーと当局が検討した成績を踏まえています。
プラスチックやステンレス、紙の上での生存が72時間との報告に基づいていますが、
このような特別な滅菌器を持つというのは非現実的です。
●SARS-CoV-2の不活性化にアルコールが用いられていることから、
いくつかの医療現場では、アルコールを使ってマスクを消毒し再利用しているところもあります。
●これから、空中浮遊粒子で運ばれるウイルスを想定し、
マスクの消毒がその素材性能に及ぼす影響を調べてみました。
検証方法
室温20℃相対湿度30%に設定した環境試験室の25m3の安全密閉チャンバー内で、
増殖させたインフルエンザウイルスをネブライザーで噴霧し、
一定時間後空気をサンプリングして回収する部分に
調査対象のマスク素材を置き、
それを通過してくる空中浮遊粒子の中の活性インフルエンザウイルスの量をプラーク法で測定、
あるいは
通過してくる空中浮遊粒子の物理的粒子の粒子径ごとの濃度をレーザー粒子測定装置で測定するやり方で、
マスク素材の評価を実施しました。
実施対象は、以下の通りです。
1)3MのN95マスク
2)同マスクに75%アルコールをたっぷり噴霧し、37℃で2時間以上乾燥させたもの(N95-アルコール)
3)同マスクを強力な蛍光管UV消毒装置のUVライトに20分間暴露させたもの(N95ーUV)
4)不織布サージカルマスク
5)同マスクに75%アルコールをたっぷり噴霧し、37℃で2時間以上乾燥させたもの(サージカルマスク-アルコール)
6)同マスクを強力な蛍光管UV消毒装置のUVライトに20分間暴露させたもの(サージカルマスクーUV)
7)マスク素材を置かない対照群
結果結論
以下は、上記2つの消毒処理を行ったN95マスクならびにサージカルマスクが
本来の性能を保持しているかどうかを検証したものです。
1.試験の対象となったマスクは、アルコール消毒によって性能が劣化することが示された。
とくにN95マスクにおける劣化は著しく、サージカルマスク以下の性能となった。
2.マスクは、20分間の強力なUV照射によっても性能のある程度の劣化が認められたが、アルコールによる劣化ほどではなかった。
3.以上は、空中浮遊活性インフルエンザウイルスならびに空中浮遊粒子自体の成績の間で矛盾ないものであった。
考察
臨床現場ではN95マスクはアルコール消毒を避けるべきである。
もしどうしてもやらざるを得ないようであっても、
軽めのUV消毒にとどめるべきかもしれない。
※以前行った実験でN95マスクは、
連続8時間の装着後でも、あるいは保存10年経過した古いものでも
性能はほとんど新品と変わらなかったことが確認されています。
※医療従事者が働いているときの呼吸スピードは、安静時の何倍にもなり、
理論的にも実際の実験成績でも、粒子のマスク通過率も高くなるため
マスクを着用したときは走らないでください。