繰り返す尿路結石に利尿剤

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若い頃から尿路結石があり、
自然排石を繰り返していた60歳。
5年前、健診で水腎症を指摘され当院を受診。
左尿管結石による水腎症
多発右腎結石と診断し、
尿道的尿路結石除去術(TUL)を行った。
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結石成分を分析すると、
シュウ酸カルシウム(Ca)とリン酸Caの
混合結石であった。

だが、
その後も尿管結石の再発を繰り返し、
1年間にTULを3回行ったため、
私は再発予防目的で、
トリクロルメチアジド
クエン酸K・クエン酸Na水和物
を処方した



尿路結石には幾つかの種類があり、
①シュウ酸Ca結石やリン酸Ca結石といった
Ca含有結石が全体の約90%を占め、
②残りはリン酸マグネシウムアンモニウム結石などの感染結石、尿酸結石、遺伝性のシスチン結石など。


トリクロルメチアジドなどの
サイアザイド系利尿薬は、
尿中Ca排泄量を減少させる効果が知られており、
Ca含有結石の再発予防に適している。

尿路結石は「5年で半数近くが再発する」
と言われてきたが、
食生活の変化や治療法の進歩により、
近年再発率はもっと減少している印象です。


Ca含有結石の再発予防策としては、
塩分や糖分の過剰摂取を控えるなどの
栄養指導と飲水促進が基本となり、
多くの場合薬物療法は必要ない。

ただし、基礎疾患や体質が原因で、
Ca含有結石を頻回に再発するケースでは、
トリクロルメチアジドの投与が
結石の再発予防に奏効することが多い。
結石を3~4回繰り返した時点で処方を検討。


サイアザイド系利尿薬は、
遠位尿細管でのNaの再吸収を抑制し、
Na利尿を生じさせることで降圧効果を示すが、
同時に細胞外液、
糸球体濾過量を減少させ、
Caの排泄量を減少させる。

遠位尿細管でのNaの再吸収抑制が続くと、
近位尿細管でのNaや水の再吸収が亢進して
Caの再吸収も促進され、
さらに尿中へのCa排泄量は減少すると
考えられている。

「尿路結石症診療ガイドライン第2版(2013年版)」では、
サイアザイド系利尿薬は、
高Ca尿症正Ca尿症のCa結石の再発予防に
有効であり(推奨グレードB)、
5年程度の長期投与による有用性が高いと
記載されています。

1年程度では再発予防効果を十分検証できていないため、副作用がなければ3年以上の投与継続が推奨されている。

サイアザイド系利尿薬には
低Na血症と低カリウムK血症の副作用があるため、
それらの予防目的で、
アルカリ化療法薬の
ウラリット(クエン酸K・クエン酸Na水和物)を少量(1g程度)併用している。 


クエン酸
尿路結石形成を抑制する代表的な物質であり、
クエン酸の排泄低下も防ぐことができます。

今回の症例では
食事・生活指導と並行して
トリクロルメチアジドと
ウラリット(クエン酸K・クエン酸Na水和物)
の服用を続けたところ、
結石の再発頻度は大きく減少した。