2020年1月6日、
セロイドリポフスチン症2型治療薬
セルリポナーゼ アルファ
(商品名ブリニューラ脳室内注射液150mg)が
発売されました。
2019年9月20日に製造販売が承認され、
2019年11月19日に薬価収載されました。
適応は
「セロイドリポフスチン症2型」、
用法用量は
「2週間に1回、300mgを脳室内投与。なお、患者の状態、年齢に応じて適宜減量する」
出生~2歳未満の患者における用法用量は
「用法・用量に関連する注意」の項を参照。
セロイドリポフスチン症2型(CLN2)は、
ライソゾームのセリンプロテアーゼである
トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)欠損を特徴とし、
進行性の神経変性を伴う極めて稀な重度の遺伝的疾患であり、
日本で難病(特定難病)に指定されている
「ライソゾーム病」の1つ。
CLN2によりTPP1が欠損すると、
ライソゾーム内で代謝されるべき老廃物が多くの器官や細胞内に蓄積します。
中枢神経で蓄積した場合には、
不可逆的な神経変性症状が引き起こされます。
CLN2患者の大部分は、
2~4歳で痙攣発作や運動失調、言語発達障害などの症状を発現し、
年齢を重ねるに伴い多様な徴候を呈しながら悪化の一途をたどる。
末期では失明や寝たきり、コミュニケーション不能となり、多くの場合は若年で死に至る。
最初の症状発現時から死亡までの期間の
中央値は7.8年との報告がある。
欧米では、
CLN2の推定発症率は
出生児10万人当たり0.5~1人、
推定有病率は100万人当たり0.6~0.7人
との報告があります。
日本では
CLN2の正確な推定有病率は算出されていませんが、
2001年の全国疫学調査では、
CLN2を含むセロイドリポフスチン症患者は21人と報告されていました。
従来、日本におけるCLN2治療としては、
痙攣発作に対する薬物療法や
神経症状に対する緩和療法など、
症状進行の安定化を図るための
対症療法のみであった。
酵素補充療法薬である
セルリポナーゼ アルファは、
ヒトTPP1酵素前駆体であり、
カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体を介してライソゾーム内に取り込まれた後、
生体内のプロテアーゼにより活性化される。
CLN2によってライソゾーム内に蓄積した
ポリペプチドからトリペプチドを切断し、
蓄積物質の増加を抑制することが期待されている。
また、本薬の投与経路(脳室内投与)は、
中枢神経系に直接かつ広範囲に
酵素を分布させられるという特徴がある。
日本人を含むCLN2患者を対象とした
●海外臨床試験(190-201試験)、
●継続投与試験(190-202試験)、
●3歳未満を含むCLN2患者を対象とした
海外臨床試験(190-203試験)
において、
本薬の有効性と安全性が確認された。
海外では、
2017年4月に米国、
同年5月に欧州
で承認されて以降、
2019年6月現在、世界7つの国または地域で承認されている。日本では、2018年9月に希少疾病用医薬品に指定された。
薬剤投与による主な副作用として、
発熱(46%)、
過敏症(38%)、
痙攣(38%)、
嘔吐(25%)などが報告されている。
重大な副作用としては、
アナフィラキシーを生じる可能性がある。
本薬の投与に際しては、
以下の事項について把握しておく必要がある。
(1)通常、注入ポンプを用いて2.5mL/時間の速度で投与するが、患者の状態に応じて、投与速度を下げて投与する。
(2)投与によりアナフィラキシーを含む過敏症反応が発現する可能性がある。
症状を軽減させるため、患者の状態を考慮した上で、抗ヒスタミン薬を単独または解熱鎮痛薬との併用で本薬投与開始30~60分前に前投与する。
(3)投与中に頭痛、悪心、嘔吐、精神状態の変化などの症状により、
頭蓋内圧が上昇していると判断される場合、
投与の中断、投与速度を下げるなどの適切な処置を行う。
(4)投与後、脳室アクセスデバイスを含む投与機器内の残存薬液を投与して脳室アクセスデバイスの開存性を維持するため、必要量を計算したフラッシュ溶液(有効成分を含まない溶液)で脳室アクセスデバイスを含む投与機器内をフラッシュすること。